香りの幅を広げられる架け橋に
―カームが生まれた背景を教えてください。
近年の国内香水市場の香りの傾向を見てみると、フルーティフローラル調のプロダクトが多く流通しており、FITSでもたくさん企画してきました。
一方で、これまでのフルーティフローラル調から少し外れているニッチフレグランスと呼ばれる香りの人気があがっていることに注目しました。
この市場の動きから、日本人の香りの嗜好性が大きく変わりつつあるといえます。普段からよく香水を使っている方や香りに詳しい方は、今まで触れたことのない香りを試すことに抵抗が少ないと思います。
しかし、日頃あまり多くの香りに触れていない方にとっては、新しい香りに手を伸ばすことは大きなチャレンジなのではないでしょうか。
香りをもっと自由に楽しんでいただきたいと考えているFITSとして、フルーティフローラル調から香りの幅を広げる架け橋となるようなフレグランスをお届けしたいという想いで企画しました。
特徴的な香りとそれを補完する香りの工夫
―香りづくりのこだわりを聞かせてください。
嗜好性は高く保っていますが、ニッチすぎないようにすることで、親しみやすさと少し背伸びするような個性の表現を両立しました。ひとつ特徴的な香りを配合するときにはそれを補完するような香りの要素を入れています。
例えばイヴカシスの香りですと、トップとミドルにカシスとイヴピアッチェが入っていて、女性らしい華やかさが前面に出る香りですが、ローワーミドルやラストにはパセリやガルバナムのような茎っぽさと苦みのある香りを入れているんです。このように配合することで、馴染みがある香りだけど、ありきたりではない、嗜好性高い香り立ちのバランスをとっているところがこだわりです。
香りにメッセージ性を込める
―企画段階で大事にしたことはありますか?
花言葉や植物が持つ意味を大事にして企画をしていたので、香りにもメッセージ性を込めることを考えました。最終的なメッセージの形として、3つのフレグランスそれぞれに”女性像”を作りました。自分がなりたい姿で香りを選ぶ、そういう香りの選び方もおもしろいかもしれません。
また、一部キー香料*に天然香料を採用することで、香りの上質さを表現しています。少しでも香りのよさや香りの楽しみが伝わるようにと採用しています。
*キー香料とは…ここでは「フレグランスのコンセプトを象徴する、表現のカギとなる香り」を表す。
―クロノスノート*のよさとは?
3つのノートから5つのノートにしたことで、ゆっくり移り変わる香りの楽しみがあります。コンセプトにも通じますが「これはこういう香り」といったハッキリとしたものではなく、滑らかでゆったりとした繊細な変化を楽しむことができるのがよさだと思います。そして5つのノートそれぞれに絶妙なニュアンスの違いがつけられることで、香りの表現やその解釈の幅も広がっています。
*クロノスノートとは…一般的に「トップノート」「ミドルノート」「ラストノート」の3段階で表される香りのピラミッドに、「ローワーミドルノート」「ボトムノート」の2段階を加えた5段階の香りの構成のこと。
こだわりのネームタグやパッケージについてはVol.2でお届けします。