1982年生まれのプロダクトデザイナー。Product Design Center代表。家具や電車など多岐にわたる製品をデザインし、国内外で多数の賞を受賞している。
GOO CHOKI PAR(グーチョキパー)は2015年に浅葉球、飯高健人、石井伶の3人によって結成されたデザイン&アートユニット。言語や思考を超えたビジュアルコミュニケーションを軸に様々な領域で活動する。
1987年山形県生まれ。2014年にフィッツコーポレーションに入社。事業ビジョンやコンセプト開発から、ブランドの商品企画、コミュニケーションまで横断したクリエイティブの全体統括を務める。
今回受賞したRISING WAVEの取り組みはProduct Design Center様、GOO CHOKI PAR様、弊社FITSという3社のコラボで生まれた商品ですが、改めてお取り組みをすることになった経緯やきっかけなどを教えてください。
(細貝)実は、Product Design CenterさんもGOO CHOKI PARさんもどちらも以前から存じ上げていました。
Product Design Centerさんとは、少し時間はさかのぼってコロナ禍にプロダクトを考えていた時、人との関わりが薄い今だからこそ、より質感や手触りにこだわっていきたいという思いが生まれ、プロダクトデザイナーさんを探したいと声が挙がったのがきっかけとなっています。
ちょっと面白い話をしてもいいですか?(笑)
2018年にFITSが発売したフィッツスポーツの製品がグッドデザイン賞を受賞したことがありまして。その時の審査員の一人が、なんと鈴木さんなんです!実は前々からそういったことがあり、つながりを感じています。
(鈴木)そうだったんですね(笑)細貝さんのお話で思い出したのですが、私もコロナ禍が、まさに個人的に香りに対して非常に関心を持っている時期でした。
急に外出ができない世の中になったことで、今まで外で何気なく感じていた自然や季節の変わり目を香りで楽しんでいたことに気がつきました。それができなくなってしまったからこそ、なにか室内にうまく香りを取り入れることはできないかと考えていたんですよね。
そんな中、FITSさんからお声がけをいただいて。香りという目に見えないものを形として落とし込むという自分の中でまだ取り組んだことのない未知の領域のご依頼に、是非挑戦したいとお返事しました。
GOO CHOKI PAR様とのきっかけは?
(細貝)香りを感じるグラフィックを作り上げられる方を探していました。そんな時にちょうどGOO CHOKI PARさんが手がけられたパラリンピックのポスターを拝見して、「むちゃくちゃお願いしたい...」と思ってお声がけしたのがはじまりです。
(飯高)そうですよね。たしか最初はタイミングが合わずお受けできなかったのですが、細貝さんから熱心に何度もご連絡をいただいて。「こんなに何度も熱いご連絡いただいちゃったら、もう断れないって...」と(笑)
(飯高)熱意みたいなのもとても伝わってきましたし、グラフィックで香りを表現するというのも、僕らが得意としている分野としてお力になれるのではないかという気持ちがあり、参加させていただきました。
プロダクトを作り上げていく過程で印象深い出来事や心に残っているやりとりなどあったら教えてください。
(細貝)衝撃を受けたことで思い出すのは、1stのデザインを拝見させていただいたときですかね。
初期はzoomでさせていただいていたので、初回のご提案ではじめて対面させていただく時には実際どのような方たちなんだろう...?と手探り状態だったんですけど。はじめて上がってきたデザインを見て、ライジングウェーブチーム全員が抑えられない高揚感を頑張って抑え込んでいるのがうかがえました(笑)みなさんが帰られた後に「絶対これだ!」と。
現在のロゴが完成した背景を教えてください。
(細貝)私たちの中で明確に決まっていたのは、コンセプトである「香りに、新しい波を。」象徴するレガシーとして「波」を表現すること。あとは直感的にイメージが伝わることを大切に採用しようとしていましたね。
ご提案する側としてはどう感じられていましたか?
(飯高)ライジングウェーブがリニューアルするとなったときに、時代にどのように合わせてコンセプトをチューニングしていくか手探りながらも見つけていかなければいけないなと感じていました。その手探りの状態から少しずつ今のロゴの形へと完成していきましたね。
ロゴが完成するまではどのくらいかかったのでしょうか?
(浅葉)割と早かったですよね?
(飯高)早かったですね。最初にロゴ案を提出してから一か月以内には今の形に決まっていたと思います。
(細貝)自分たちが想像していたよりもずっと高いクオリティのものを最初からあげていただいていました。
また、アートディレクションの領域はFITSが仕切るよりもお任せしたほうが良いと思っていて。私たちがすべきことは、このデザインを通して何を伝えたいかという部分の軸をずらさずに追求していくことだと考えていました。
プロダクトデザインの進行はどうだったんですか?
(鈴木)FITSさんがかなりクリエイター側の意見を取り入れてゆだねてくださるので、セッションをしながらともに作り上げていく感覚があって、そこが難しいところでもあり、楽しいところでもありました。
セッションを重ねていく中で、「波」というコンセプトが浮かび上がってきて...。一言に波といっても細かい波紋のようなものから円心円状のものも、大きく揺らめく波もあります。
「波」も「香り」も明確な形がないものなんですよね。なので、どの波を表現するのが一番今回のライジングウェーブに合うのか、かなり探しました。実際の波をパラメーター化してモデルにしたこともあれば、あえて抽象的なアイコニック調の波をつくってみたこともあります。
▼鈴木さんによるボトルデザインの試作品。3Dプリンターで作ったものに自身でやすりをかけてその上から粘土で「波」を作りあげて細かく調整していった。
どのようにして今の商品の形になったんですか?
(細貝)選ぶ際の議論の中で、鈴木さんはいろんな形のご提案とともに、コストとクオリティのバランスに関する課題を解決するアイディアをいつも出してくださいました。チームの中でもその過程を楽しみながらスムーズに決まっていった印象があります。
(鈴木)確かに、常にアイディアを出しながら進めていましたね。あとは通常クライアントとデザイナーの二者で進めることが多いのですが、今回は三者で議論していく場面が多かったので、僕にとって、GOO CHOKI PARさんの存在はとても大きかったです。毎回アイディアを出しながら「これ、面白いかな?」とチラチラみなさんの表情をうかがいつつ(笑)
(一同)大爆笑
(細貝)オリエンテーションで枠組みを強く固定してしまうとアイディアのボトルネックになってしまうと思っていたので、遠くにアイディアを飛ばしていくために余白のある形からスタートすることを意識しました。
だからこそ今回はその場で全員でセッションをしていくライブ感のあるスタイルにすることで、アイディアをコラボで大きくして創りあげることがとてもミソだったのではないかなと思います。
ここでしか聞けないこだわりなどあれば教えてほしいです。
(鈴木)どう波を表現するかにかなりこだわりました。ライジングウェーブの長い歴史をオマージュしつつ、細貝さんからはブランドのテーマである「自由と挑戦」を形にしてほしい!と言われてもいたんです。
美しい形は大前提。そのうえで使う人たちやFITSさんのアイコンになってほしいなと思いながらも、どう自由と挑戦のキーワードを実現していくかにこだわっていました。
本当にきれいなボトルデザインですよね。
(鈴木)キャップ内部の形の曲線や、角の取り方を何パターンも試作をしながら、3Dでシミュレーションをして、水のように見えるデザインをたくさん検討しました。
このボトルは、プラスチックとガラスを組み合わせているのですが、物理では屈折率といって、同じ透明の素材でも屈折の仕方や光の反射が違うんです。なので、プラスチック・ガラス・水の光の屈折をうまくマージしていきました。それを細かく調整していきましたね。
GOO CHOKI PARさんのこだわりは?
(石井)光の屈折とかと真逆の話になるんですけど(笑)パッケージに色校正が上がってきたとき、実は最初は上と下が同じ色だったんですよ。その組み合わせをふと入れ替えてみたら、これのほうが可愛いってなって…直前だけど「(バイカラーに)変えますか?」ってなってできました。
(鈴木)そっちの方がクリエイターぽくっていい・・・
(一同)笑
(細貝)ワントーンで予定していたものの、バイカラーにして軽やかに可愛くなりましたね。香り自体はコロンで軽快なので、香りとしても見た目としても軽さを感じられるほうが良いなと思いました。重くなりすぎない感じがターゲットにも合っていて良かったのではないかと思います。
難しかった点や苦労した点はありますか?
(飯高)開発の中でってことですか?一個もないかも。
(一同)かっこいい・・・笑
(細貝)3社がはじめてそろうときに緊張感がありました。良い会話ができるようなメンバーであることは確信していたんですけど、実際会ってみたときの感覚はどうなるんだろうって。
(鈴木)難しかったということではないですが、ロゴの位置は印象に残っています。
プロダクトデザインする上でロゴは正面の中心に置くのがセオリーなので、初めてGOO CHOKI PARさんからロゴを載せたデザインを見せてもらったときはびっくりしました。自分が想定してたロゴの位置が正面から少し左にずれていたので。GOO CHOKI PARさんが正面を間違えたのかなって確認しました(笑)
(一同)笑
(飯高)ロゴが正面にあると、せっかくのボトルの波の動きを殺しちゃうかなって思ったんですよね。左に置くことで重心が左に下がって、そこから波が起きそうな感じを表現しました。
(鈴木)今思えば、なるほどなぁと思う面白いデザインでした。これがコラボレーションの醍醐味だと嬉しくなりました。
Pentawards2024受賞に対するコメントやご愛用者様へのメッセージをお願いします。
(鈴木)率直に、国際的なデザイン賞を日本のブランドが頂けるのはすごいなと思いますね。
国際的なデザイン賞を受賞していくものって、大体グローバルで売られていて、みんなが見たことがあるという前提があったりします。そんななか、純粋にデザインを見て評価していただけたのは快挙だと思います。
(飯高)本当にそうですよね。まだマーケットが狭い中での受賞でブランドの歴史はあってもこの商品はまだ発売して間もないのにすごいなって思います。
(細貝)販売価格とモノのクオリティみたいなものの組み合わせで言ったら、本当に快挙だなって。使ってほしいターゲットに購入していただける値段でこのクオリティを出せたのは、すごいことだと思います。
好きな香りがひとつあるだけで、暮らしが豊かになることに驚いてほしい。これからも私たちは、新しい香りの波をつくり続けます。
【終了後余談】
(細貝)最後にひとつだけ聞いてもいいですか。今さらなんですけど、GOO CHOKI PARさんが掲げる”言語と思考を超えたビジュアルコミュニケーション”って3人の中でどんな風にしているのかなって。
(飯高)一番は、すごく口下手なんですよ、僕ら(笑)
言語でのコミュニケーションって、そんなに全部伝わらないよねっていうのが一番あって。すごく感覚的に、この3人の中で作業するときとかは話すんですよ。ほんとに2〜3語で終わるような。
難しく言葉を使うというよりは、ビジュアルでコミュニケーションをとってますね。
(細貝)そうなんですね。鈴木さんのお仕事で印象深いのは、ハイブランドのインテリアやウィンドウディスプレイもそうなんですが、私鉄電車をデザインされるなどとても幅広いジャンルのお仕事をされているところなんですよね。何か、取り組む上で選ぶ基準のようなものはありますか?
(鈴木)ものづくりへの敬意がある方々とお仕事することが多いということもあり、私は実際に手で触って、ものづくりをすることが根本的に好きなんです。なので自分の手の中で捉えていけば何でもデザインはできる、と思ってるのでジャンルで選ぶということはないです。
ただ、文脈を無視した打ち上げ花火のようなデザインは苦手かもしれません。ちまちま手仕事を重ねていくのが得意なタイプです。なので、今回のようなものづくりの仕事はすごく楽しかったです。
いかがでしたか?
ライジングウェーブが「Pentawards 2024」を受賞した背景がうかがえるお話でしたね。
3社それぞれのこだわりと想いがありながらも、柔軟なセッションによってブランドコンセプトである「香りに、新しい波を。」を表現するプロダクトが生まれたことがわかりました。
この機会に改めてライジングウェーブのデザイン面にも注目してフレグランスを楽しみましょう。
Product Design Center
https://productdesigncenter.jp/
GOO CHOKI PAR